人工膝単顆置換術の場合には手術後も手術前とほぼ同程度まで曲がるようになります。しかし、人工膝関節全置換術の後では膝の曲がり(可動域)が120度程度ぐらいになることが多く、手術前からなんとか正座ができていた方は不便に感じられるかもしれません。現在の所、正座をしても大丈夫だと保証している人工関節の機種はありませんし、私共も「正座しても大丈夫ですよ」と言うことはできません。しかし、私共が手術した患者さんでは手術後に正座ができてしまう方が1割程度いらっしゃいます。それらの患者さんはもともと正座をできていた方たちです。平均すると、もともとよく曲がっていた方は、曲がりにくくなり、あまり曲がらなかった方は以前よりは曲がるようになり、一般的には直角以上(私共の所では130° 程度)にはなります。
現在アジアを中心に世界中で人工関節手術後の膝を深く曲げることを目標に、新しい人工膝関節デザインの開発が行われています。また、医師も日夜、手術手技の向上に努めており、今後可動域の問題が解消されるかもしれません。もちろん手術前によく曲がった方が術後もよく曲がる傾向にありますが、残念ながら患者さん個々人で術後にどこまで曲がるかについては私共も予測できません。ご本人の努力も大切です。だから、絶対に正座できないと困るという方にはお奨めできません。
私共のグループの研究ではイスからすっと立ち上がるには約100°、床から立ち上がるには135°が必要です。ですから、洋式の生活に必要な最低100°は確保するのが私共の使命だと思っています。しかし、いろいろな条件により動く範囲をあきらめて、痛みを取り除くことに専念せざるを得ない場合もあります。術後にどの程度の生活を望まれるかについてよくご相談されることが大切です。
また、立て膝という動作についても私共は極力しないように指導してきました。しかし、それでは日常生活に困られる方もおられ、私共はこれが安全にできるように有限要素法という工学的手法によってコンピューターシミュレーションを行い、立て膝動作による人工関節への負担について研究しています。この結果が立て膝動作を繰り返し行っても傷みにくい人工関節の開発に役立てばと考えています。現在は、正座についても同様の研究を行っています。
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